副腎静脈サンプリングの目的
副腎静脈サンプリングの目的は、左右の副腎のどちらが原発性アルドステロン症の原因となるアルドステロン過剰分泌を引き起こしているかを調べることにあります。
すなわち、左右の副腎静脈中のアルドステロンを直接測り、高い方の副腎に原因となる腺腫が存在することがわかり、その副腎の摘出手術をするという選択が可能になります。
あるいは、両方の副腎のアルドステロンの値が高い場合には、薬物治療を選択することになります。
詳しくは「アルドステロン症の種類~腺腫による一側性と過形成による両側性」にて
副腎静脈サンプリングの実施方法
通常は、右側の大腿部付け根の静脈からカテーテルを挿入します。
そして、静脈をたどっていって右の副腎の静脈に達したら、そこから血液を採取します。
次に、左副腎静脈遠位部(下横隔膜静脈よりも奥の部位)から採血。
次に、左副腎静脈近位部(下横隔膜静脈よりも手前の部位)から採血。
さらに、下大静脈末梢側から採血。
そして、下大静脈中枢側から採血。
全ての採血が終わったら、それぞれの血液内のアルドステロンを測定します。
なお、診断の精度を向上させるため(検査によるストレスの影響をなくし、そしてカテーテルが目的の血管に入っているかを確認するために)ACTHという薬剤を注射して、その前後で採血をするのが通常です。
副腎静脈サンプリングの費用
実施する病院によって多少異なりますが、大体7万円程度です。
また、3日間ほどの入院を要します。
副腎静脈サンプリングの合併症
カテーテルで血管内を侵襲する検査なので、血管損傷、血腫、血栓症といった合併症を引き起こすリスクはあります。
そのため、できるだけ熟練した医師がいる病院で検査をうけることが望ましいです(といっても、医師のスキルなどの情報は一般人には届きにくいのが現状ですが・・・)
手術を希望しない患者は副腎静脈サンプリングを受ける必要はない
スクリーニング検査、機能確認検査で原発性アルドステロン症陽性判定がでた患者は治療を受けることが必要になります。
そして、治療方法を確定するために副腎CT、副腎静脈サンプリングの検査を受けるのが通常の流れです。
ですが、最初から手術ではなく薬物治療を希望する患者の場合は副腎静脈サンプリング検査を受ける必要はありません。
薬物治療を受けるのであれば、左右どちらの副腎に病変があるのかを確定する必要はないからです。
ただし、薬物治療は一生続けなければなりません。また副作用のリスクも当然にあります。
そのことを十分に認識したうえで、副腎静脈サンプリング検査を回避するかどうかを慎重に判断しなければなりません。
⇒続いて「アルドステロン症の治療方法」