「アルドステロン症の種類~腺腫による一側性と過形成による両側性」でお伝えしましたように、アルドステロン症にも大きく分けて①副腎にできた腺腫(アルドステロン産生腺腫)を原因とする原発性アルドステロン症と、副腎の過形成を原因とするもの(特発性アルドステロン症)があります。
そして、どちらの種類に該当するかによって、治療方法も異なってきます。
目次
腺腫が原因のアルドステロン症の治療方法
アルドステロン産生腺腫が引き起こす合併症は以下の通りです
1 片方の副腎にアルドステロン産生腺腫ができる
↓
2 アルドステロンが過剰に分泌される
↓
3 高血圧、低カリウム血症といった合併症が発生する(他にも腎不全、心不全、心肥大、不整脈、脳梗塞、脳出血、大動脈瘤といった臓器障害を引き起こすリスクもある)
腺腫の切除が抜本的な治療
上記の流れを見て頂ければお解りになると思います。
様々な病気の根本的な原因は副腎にできたアルドステロン産生腺腫にあります。
ですので、この腺腫を切除してしまえばいいのです。
腺腫を切除すれば、アルドステロンの過剰分泌はなくなります。
そして、血圧も徐々に下がり(摘出後すぐに正常値にまで下がる患者もいます)、カリウムの値も正常になります。
このように、腺腫を切除することが抜本的な治療といえるのです。
ただし、腺腫の切除といってもほとんどの病院では腺腫の部分切除はできず、副腎の全摘出をすることになります。(副腎を摘出しない腺腫の部分切除を実施している病院は、私が調べた限り現時点では東北病院と横浜労災病院のみです)
副腎は二つあるので、片方の副腎を摘出しても問題はないとは言われています。
ですが・・・詳しくは「片方の副腎を摘出した場合の後遺症」にて
薬物治療も選択肢のひとつ
患者が副腎摘出手術を望まない場合には、薬物治療を選択することになります。
また、心臓や腎臓の働きが弱っていてそもそも手術ができない患者もいます。そういった患者は必然的に薬物治療を受けることになります。
薬物治療の場合、病気の根本的原因である腺腫はそのままです。
しかし、アルドステロンの過剰分泌はアルドステロン拮抗薬でコントロールできます。
同様に、高血圧は降圧薬、低カリウム血症はカリウム製剤でコントロールできます。
投薬は一生続けなければなりませんが、健康状態を保つことは可能と言われています。
副腎の過形成を原因とする特発性アルドステロン症の治療
過形成を原因とする特発性アルドステロンの仕組みは以下の通りです。
1 アルドステロンを分泌する細胞の数が副腎内で異常に増加(過形成)
↓
2 アルドステロンが過剰に分泌される
↓
3 高血圧、低カリウム血症といった合併症が発生する(他にも臓器障害を引き起こすリスクあり)
腺腫の場合と違い、過形成は手術による切除というわけにはいきません。
ですので、必然的に薬物治療となります。
すなわち、アルドステロン拮抗薬、降圧薬、カリウム製剤で健康状態を維持していくことになります。
両方の副腎にアルドステロン産生腺腫がある場合の治療法
稀なケースだそうですが、左右両方の副腎にアルドステロン産生腺腫があるケースもあります。
この場合、片方の腺腫がある場合と違って、副腎の全摘出手術はできません。
両方の副腎を失うと、生命維持に必要なホルモンが分泌されなくなってしまうからです。
ですので、このケースでは薬物治療を選択することになります。
ただし、腺腫の部分切除が可能な病院であれば、双方の副腎から腺腫のみを切除するという手術も場合によっては可能なようです。