本当に怖い治療抵抗性高血圧

 

高血圧の治療の基本は降圧剤の服用です。

ただし、1種類の降圧剤だけで十分に血圧が下がる人はそんなにいません。

通常は、作用の異なる複数の降圧剤を併用して治療するのが一般的です。

 

ところが、中には作用の異なる3種類以上の降圧剤を服用しているにもかかわらず、血圧が正常値にまで下がらない患者もいます。

このような高血圧を「治療抵抗性高血圧」と言います。

 

治療抵抗性高血圧は脳卒中心臓発作心不全腎疾患などの心血管系リスクが非常に高い命が危ない状態です。

できるだけ早期に血圧を正常値にまで下げる必要があります。

そして、高血圧患者の約10%がこの治療抵抗性高血圧であると推測されています。

また、治療を受けている高血圧患者の約30%が治療抵抗性高血圧であるというデータもあるそうです。

 

自覚症状がほとんどない高血圧。

しかし、実際には命の危険にさらされている人が数多く存在するのが現実なのです。

 

治療抵抗性高血圧の治療

 

治療抵抗性高血圧は、降圧剤だけでは血圧を十分に下げることができません。

そこで、このような人たちは、薬の服用に加えて食事制限運動などを日常的に行うことによって血圧を下げていかなければなりません。

しかし、少しくらい食事制限や運動をしたからといって劇的に血圧が下がることはないでしょう。

長期間にわたる地道な努力が必要になります。

 

しかし、もし治療抵抗性高血圧の原因が原発性アルドステロン症にある場合には、原発性アルドステロン症を治療することによって治療抵抗性性高血圧までも完治する可能性があります。

 

治療抵抗性高血圧と原発性アルドステロン症

 

高血圧治療として選択される主たる降圧剤はカルシウム(Ca)拮抗薬利尿剤アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)です。

 

Ca拮抗薬は血管を拡張させることで血圧を下げるという効果があります。

利尿剤は腎臓から塩分と水を出すことによって血圧を下げます。

ARBはアンジオテンシンという血圧や心臓、腎臓に関係するホルモンの作用を抑えて血圧を下げます。

 

しかし、高血圧の原因がアルドステロンの過剰分泌(原発性アルドステロン症)である場合は、アルドステロンの過剰分泌そのものを抑制しないと、やはり血圧は十分に下がらないのです。

つまり、上記のCa拮抗薬、利尿剤、ARBだけでは治療できない、ということになります。

 

ですが、「アルドステロン症の種類~腺腫による一側性と過形成による両側性」でもお話ししましたように、原発性アルドステロン症の原因が片方の副腎に出来た腺腫である場合には、腹腔鏡手術によって腺腫を取り除くことにより、原発性アルドステロン症は完治します。すなわち、アルドステロンの過剰分泌がなくなるのです。

そして、その結果、必要となる降圧剤の種類が減る、あるいは高血圧そのものが完治する可能性もあります。

死亡リスクが一気に減少するのです。

 

3種類以上の降圧剤を服用してもなかなか血圧が下がらない人。

そのまま放置していれば、死期が早まるだけです。

薬をいろいろ変えて試すことも良いでしょうが、一度は原発性アルドステロン症の検査を受けてみることをお勧めします。

もし、原発性アルドステロン症が原因であれば、高血圧そのものが完治する可能性があるのです。

命を拾えますよ。