くも膜下出血とは脳の表面のクモ膜と軟膜の間にある空洞(クモ膜下腔)で出血することをいいます。
極めて重篤な病気であり、後遺症が残ったり、最悪の場合死に至ります。
そして、治療の難易度が高い病気でもあるのです。
くも膜下出血の再出血予防
くも膜下出血は、事故による外傷が原因で起こることもありますが、
クモ膜下の血管にできた脳動脈瘤が突然破裂することで起きるケースが大半です。
脳動脈瘤破裂によりくも膜下出血が起きた場合、最初にしなければならないことは脳動脈瘤の再度の破裂による再出血の予防です。
最初の破裂から24時間以内に再び破裂することが多いというデータがあります。
そして、最初の破裂で命が助かったとしても、再出血した場合の死亡率は極めて高いことがわかっています。
ですので、くも膜下出血が生じた場合は、とくかく早期に再出血を防ぐ手術をしなければならないのです。
そして、この手術にはクリッピング術とコイル塞栓術(そくせんじゅつ)の2種類があります。
クリッピング術
クリッピング術とは全身麻酔をして頭蓋骨を開け、破裂する危険のある動脈瘤の根元を金属性のクリップで挟み込み、出血しないように処置する治療方法です。
この治療は脳動脈瘤の再破裂の予防法として、最も確実性が高いとされています。
ただし、細菌感染のリスクはありますし、未熟な医師が行えば正常な脳血管の流れまで障害して脳梗塞を引き起こすこともありえます。
また、この手術は原則として最初の破裂から72時間以内に行わなければいけません。
それ以降は脳血管が縮み始める(脳血管攣縮)ので、手術による合併症のリスクが高まるからです。
コイル塞栓術
コイル塞栓術とはカテーテルと呼ばれる細い管を股関節の血管から脳血管内へ誘導し、脳動脈瘤内にコイルを詰めて閉塞させてしまうという治療です。
頭蓋骨を開けることはないので侵襲は少なくて済みます。
しかし、予防措置としての確実性はクリッピング術に比べると低いものであり、手術後に再び出血するケースも少なくないようです。
また、近年発達した治療方法であるため、コルクによる閉鎖の効果がどれだけ継続するのかもはっきりとはわかっていません。
手術方法の選択
クリッピング術、コイル塞栓術のどちらの手術を行うかは、脳動脈瘤の大きさ、場所、発生からの時間、患者の状態などを総合的に考慮して医師が判断し、患者や家族にその手術方法を勧めます。
緊急を要する事態なので患者や家族には迷っている時間はありません。
ですが、確実性が高いとは言えないコイル塞栓術を勧められた場合には、執刀医の実績などを確認してから承諾をした方が良いでしょう。
練習台として使われたりしたらたまったもんじゃないですからね。
くも膜下出血の脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)予防
上記のクリッピング術またはコイル塞栓術により出血を止めたら、本格的な治療を開始します。
それが「脳血管攣縮予防」です。
クモ膜下出血を発症して発症4日目から14日目くらいの間は脳血管が縮みやすい状態になります(脳血管攣縮)。
脳血管が縮むことで血管が詰まりやすくなり、脳梗塞になるリスクが高まるのです。
ですので、この時期は脳血管攣縮を予防するための集中的な治療が必要になります。
具体的には点滴治療などによって血圧をコントロールしたり脱水症状を起こさないようにして脳血管攣縮を予防しますが、確実に予防できる方法は現時点ではないようです。
しかし、この時期の治療で失敗すると重度の後遺症が残ったり、命を落とすことにもつながります。