「副腎」は腎臓の付属物ではない?
副腎は左右の腎臓の上にちょこんと乗っかっているようにして存在する臓器です。
かつては腎臓の付属物と考えられていました。
そのため「副腎」という名前が付けられたそうです。
しかし、実際には副腎は腎臓とは全く異なる働きを持った臓器なのです。
ざっくり言うと以下のような違いがあります。
腎臓→泌尿器系の臓器
副腎→生命を維持するために不可欠なホルモンを分泌する内分泌器
もう少し詳しく書くと、
腎臓の役割は、血液から老廃物や不要の水分を濾過し尿として排出、尿素などのタンパク質などの代謝物を排出、 内分泌液の代謝調整などです。
副腎の役割は、アルドステロン、コルチゾール、カテコールアミンなど多種のホルモンの分泌です。
副腎の構造
副腎は餃子くらいの小さな臓器なのですが、その構造は大きく分けて表面の副腎皮質と内部の副腎髄質に分かれます。
分泌されるホルモンもそれぞれ異なります。
上述したアルドステロン、コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンです。
カテコールアミンは副腎髄質から分泌されます。
副腎から分泌されるホルモンの役割
副腎から分泌されるホルモンは多岐にわたるのですが、ここでは上述した3つのホルモンの役割について書いていきます。
アルドステロン→体内の水分と塩分(ナトリウム)のバランスを整える
コルチゾール→血糖値や血圧など体内全てのバランスを整える
カテコールアミン→自律神経の活動、血糖値、血圧などの調整をする
ホルモンが過剰に分泌されると・・・
副腎から各種のホルモンが分泌されるのは、人間が生命を維持するためにそれが必要だったからです。
人間が生命体として進化していく過程で、副腎がそのような役割を果たすようになったのです。
そして、人類の長い歴史の中での一番の生命の危機は、空腹時に外敵に襲われることでした。
そのため、空腹時でも戦える状態を作るために、例えば血糖値を上げるコルチゾールというホルモンを副腎は分泌するのです。
水分と塩分を体内にため込むアルドステロンも人が臨戦態勢に入るために必要なホルモンです。
その他の副腎から分泌されるホルモンの多くは、人類が飢餓や外敵との戦いの中で生き抜くために必要なものだったのです。
ところが近年の(人類の長い歴史のなかでいえば、ほんの極最近の)文明社会の発展によって、人類が飢餓や外敵との戦いといった危険に遭遇することはほとんどなくなりました。
そのため、血糖値を上げたり水分や塩分を体内にため込む必要性は現代では低下したのです。
それどころか、現代の裕福な人類は、必要以上の食事を摂るようになりました。
その結果、高血圧、糖尿病などといった現代病を患う人間が増えてきたのです。
文明社会以前の時代の人間にとって必要だった副腎からのホルモンが、現代では逆に健康を害する要因にもなっています。
なお、上述したホルモンを例にあげると、アルドステロンが過剰に分泌されると原発性アルドステロン症、コルチゾールが過剰に分泌されるとクッシング症候群、カテコールアミンが過剰に分泌されると褐色細胞腫と呼ばれる病気になります。