「すみません・・・」
そう言いながら研修医Mはまたしても私の腕に注射針を刺す態勢に入りつつあった。
「あ・・・今度は慣れた人にお願いできますか?」
さすがにもう勘弁してくれ、だ。
2度も地獄を見せられて3回目はない。
これ以上はムリ。
いくらどう見ても20代前半にしか見えないピチピチした女性研修医Mだとしても、だ。
「わかりました・・・」
そう言い残してMは姿を消した。
しばらくして、私の入院部屋に一人の医師がやってきた。
今度も女医だ。
ただし、今回の女医は30歳前半に見える。
ある程度経験を積んでいる女医のようだ。
「研修医のYです。ルートを取らせてもらいます」
は?研修医?
あわててYの胸元の名札を見た。
確かに「研修医」と書かれている。
この女性が研修医・・・
どう見ても30代前半にしか見えない。
医学部ってたしか卒業まで6年だよな。
ということはストレートでいって24歳で研修医。
このYは仮に30歳ジャストだとすると・・・え~、1浪、2浪、3浪・・・・6浪
ろ、ろ、6浪?(*石野陽子風に)
いや・・・いくら医学部だとしても、それはないな。
とすると、本当は24歳なんだけど肌のハリも失うほどのとてつもない猛勉強をして30代に見えてしまっているとか・・・
あるいはやはりこのYはとてつもなく頭の悪い子でそれでもどうしても医師になりたくて石の上にも3年の倍の6年浪人して医師になったのか?いや、しゃれじゃなく・・・
「腕はどちらがよろしいでしょうか?」
「ああ・・・では右腕で」
左腕はついさっき研修医Mに2回も突き刺されたばかりで痛みが鮮明に残っているし色も変な風に変わってきているのでもはや右腕しか選択の余地は残されていなかった。
私は恐る恐る右腕をYに差し出した。
いくら30代前半に見えるといってもその実体はただの研修医。
大丈夫なのか?
私の小さな胸は恐怖の余り張り裂けそうになっていた。
Yは私の右腕をそっと手に取った。
私の肘の裏には青いくっきりとした血管が浮かび上がっている。
そしてYはその血管を見つめている。
やがてYはその手に持った注射針を私の右腕の肘の裏に突き刺した。
!★?#&$★!/\?“※!★?!?!?!?!
「あ・・・大丈夫ですか・・・」
「だ・・・大丈夫です・・・」