普段は一時間に数回はおしっこにいく頻尿の私。

しかし、今日の私は生理食塩水負荷試験が始まった7時10分からなんと3時間もの間、おしっこを我慢し続けている。
それはこの検査の実施中は体を起こしてはいけないことになっているため、おしっこをするときはナースコールをしてナースにおしっこをとってもらわなければならないからだ。

 

ナースにおしっこをとられるということはすなわち私のお粗末なおちんちんをナースにつままれるということを意味する。
それがわかっていてナースコールをする勇気は私にはない。

しかも、おしっこを取りに来たナースがとっても若くてとっても美人のナースだった場合に起きるであろう誰も止められないwild and toughな暴動を想像するとなおさらだ。

 

しかし、どうやら終焉の時が近づいてきたようだ。

 

一時は点滴が終わったと思ったのに実はもう一回点滴をしなければならずしかも予定の4時間を大幅に超えるペースになっていたという悲劇的な事実に直面した私の膀胱は今にも決壊しそうになっていた。痛みはすでに全身を回っていた。

 

「うぅ・・・ダメだ・・・」

 

私は全てを受け入れる覚悟を決めた。
いや、決めざるを得なかった。
私はその瞬間にナースコールのボタンをすばやく押した。

 

 

しばらくするとナースがやってきた。
幸いなことにそれはとっても若くてとっても美人のナースではなく、眉毛が濃い地味でちょっと暗い感じの40代半ばにみえる強いていえば眉毛が濃くなった野口さんみたいなナースだった。

私より若干年下ではあるが、これならよもや暴動が起こることはないだろう。
つままれることにはなるが、それはもう観念するしかない。
この眉毛が濃くなった野口さんみたいなナースに身をゆだねよう。

 

「どうしましたか?」

 

見た目通りの暗い感じで眉毛が濃くなった野口さんみたいなナースが私に声をかけてきた。

 

「あの・・・おしっこをしたいのですが・・・」

「ベットの横に尿瓶があります。そこにしてください」

「え・・・自分で尿をとっていいのですか?」

「いいですよ」

 

どういうことなんだ?
今朝、30代半ばくらいのまあまあ経験を積んでいそうな取り立てて特徴のない薄い顔をしているナースは体を起こしてはいけないからおしっこはナースがとると言ってたじゃないか?
あ、この大病院のいつものパターンか?

 

いや・・・でもいい。
今回ばかりは話が違っていい。
ナースにおしっこを取られなくて済むのだから。

 

「わかりました。では自分でします」

 

私がそう言うと眉毛が濃くなった野口さんみたいなナースはそそくさと部屋を出て行った。

ナースが出ていくや否や、私は上半身を起こし尿瓶を手に取った。
そして私は自分のお粗末なおちんちんをつまみだし尿瓶の中に入れ込んだ。
そう。私の膀胱は決壊寸前だったのだ。

 

 

・・・・・ん?

 

でない。

おしっこがでない。

 

膀胱は破裂寸前なのにもかかわらず、私のおちんちんからおしっこがでてこない。

 

我慢しすぎて私のおちんちんの発射機能が失われたのか?
それともベットの上だから脳が混乱して排尿命令を出せなくなっているのか?

 

そういえば、私の父も、そして祖父も、おしっこをしたいのに出なくて救急車で搬送されたことがある。
二人とも顔に脂汗をかいたような苦しそうな表情をしていた。

そうか。
これが二人が味わった生みの苦しみなのか・・・

 

しかし、ここで救急車を呼ぶわけにはいかないし、ナースコールをしてしまうと結局はナースにおしっこをとられる羽目になってしまう。

 

よし、とにかく自分で解決しよう。

 

そう決めた私は左手でおちんちんを尿瓶につっこんだまま、右手でお腹をおおきく回すように押し続けた。
ゆっくりと、ゆっくりと。

 

すると、ようやく一滴のおしっこが尿瓶の中に滴り落ちた。
そして、少し間を置いた後、残りの大量に貯まっていたおしっこが鉄砲水のごとく一気に噴き出した。

 

 

 

はぁ(´∀`*)

 

 

私は救われたのだ。

 

 

 

しかし、それにしてもどうして自分でおしっこをしてよいことになったのだろう?

 

おしっこを我慢する痛みとおしっこが出ない危険から解放された私の頭にふと素朴な疑問が湧いてきた。

生理食塩水負荷試験実施中のおしっこについてのガイドラインに関しては正確なところを私は知らないが、アルドステロン値測定の繊細さからすると、おそらくは取り立てて特徴のない薄い顔をしているナースが言うように検査の間上体を起こしてはいけないのでナースがおしっこをとることになっているはずだ。

だとしたらなぜ眉毛が濃くなった野口さんみたいなナースは自分でおしっこをとるように言ったのだろう?

 

ただ単に面倒だからか?

そう。
そういうことだ。

この大病院に勤めている職員は医師からナースから受付係に至るまでとにかくいい加減な人間が多いのだ。
眉毛が濃くなった野口さんみたいなナースはその典型なのだろう。

 

 

・・・いや、
果たして本当にそうだろうか?

 

もし私が決して髪が多いとは言えない典型的な40代後半の冴えないおっさんではなく、まるで福山雅治みたいにいくつになっても女性を虜にするセクシーなナイスミドルだったらどうだろうか?

 

それでも眉毛が濃くなった野口さんみたいなナースは「ベットの横に尿瓶があります。そこにしてください」と冷めた感じで言っただろうか?

 

あるいは
「あの・・・おしっこをしたいのですが・・・」(* 福山雅治風に)と言った瞬間に

 

「いいですよ。ではパンツを降ろします」

 

と躊躇なくむしろ積極的に介助の準備を進めていたかもしれない。

 

そしてクックックッ・・・と不気味な音を発しながらパンツを降ろすや否や執拗なまでにゆっくりとゆっくりとご立派な福山jrをその手に取りその手のひらで転がしまるで芳醇なワインの香りを味わうかのごとく恍惚とした表情を浮かべておしっこを取っていたかもしれない。
あるいは。

 

 

 

 

ふと時計を見た。
時計の針は11時30分を指していた。
2回目の点滴が始まってからいつの間にやら1時間以上経過していた。

 

そして点滴袋は空になっていた・・・