生理食塩水負荷試験の結果を見た。

 

0 240min
PAC(pg/ml)

 

150 54.3

 

 

生理食塩水を投与すると、健常人であれば循環血液量が増加し、レニン活性・アルドステロンが抑制される。
しかし、原発性アルドステロン症であれば、アルドステロンが過剰自律分泌しているので、生理食塩水負荷後もアルドステロンは抑制されない。

この原理を利用した検査が生理食塩水負荷試験だ。

原発性アルドステロン症の疑いのある患者に生理食塩水を点滴投与して4時間後にアルドステロン濃度(PAC)を測定する。その結果PACが60pg/mL以上であれば陽性という判断になる。

生理食塩水負荷試験の原理・実施方法・副作用

 

つまり、着目すべきは4時間後のARRの値だ。

 

4時間後のARR・・・

ここだ。

 

0 240min
PAC(pg/ml)

 

150 54.3

 

 

4時間後、すなわち240分後のPACは「54.3」

基準値の「60」を下回っている。

 

陰性だ

 

 

「先生、生理食塩水負荷試験の結果は・・・」

「4時間後のアルドステロン濃度が54.3。基準値である60を下回っています。したがって生理食塩水負荷試験の結果は陰性ということになります」

 

「あの・・・」

「はい」

「生理食塩水負荷試験をした時、採血をしたのは4時間後ではなく5時間10分後だったんですよ。私の場合」

「・・・・・」

「ガイドラインで生理食塩水負荷試験は4時間後の採血となっていることを私も知っています。ところが、その時の担当のナースが点滴の速度調整を間違ったみたいで、実際には4時間ではなく、5時間10分後に採血をしているのです。」

「あ~・・・」

「もっと正確に言います。1回目の点滴で3時間近くかかっています。で、2回目がなぜか1時間で終了しています。つまり点滴自体は大体4時間で終了しているのです。しかし、そのあと私はしばらく放置されて、採血をしたのがそのおよそ1時間後。つまり検査開始時間からおよそ5時間後に採血しているのです」

取るに足らない患者が抱く看護師と医師と病院の医療過誤隠蔽疑惑

 

「あ~・・・」

「つまり、このメモの「240min」という記載は間違いであり、したがってPACの数字も正しくないということになりませんか?」

「あ~、だとしても問題ないです」

「・・・」

「この試験は生理食塩水を投与することで正常にアルドステロン濃度が抑制されるかを測定する検査です。そして、結果として60という基準を超えていない。採血が5時間後だとしても、それでも基準値を超えていないということは4時間後の時点のアルドステロン濃度はもっと低かったということになりますから、いずれにしても基準値以下。つまり陰性という結論には変わりはないことになります」

 

ん?
どういうことだ?
のび助。
騙されてはいけない。
冷静に、かつ、迅速に考えろ。

 

この試験は生理食塩水を投与することでどれくらいアルドステロン濃度が下がるかを調べるんだ。
で、投与前のアルドステロン濃度が「150」。
そして、投与することによって、この数字が下がることになる。

 

そうか。
投与が進むにつれてアルドステロン濃度はどんどん下がっていく。
そして、投与が終了した4時間後がもっとも低い値になる、ということだ。

 

じゃあ、それから1時間放置された5時間後は?

 

・・・抑制されたアルドステロン濃度が元に戻ろうとする。つまり上昇する、ということだな。

 

だとすれば、上昇を始めて1時間経過した時、つまり試験開始から5時間後の値が基準値を下回っているということは、4時間後はもっと低い値だから当然に基準値を下回っているということか・・・。

つまり、W医師の説明はつじつまがあっている。

 

いや、まて。
でも、そもそも点滴投与のスピードが1回目と2回目とでは全然違う。
1回目はガイドラインのおよそ3分の2のスピードで、2回目はおよそ2倍のスピード。

この影響はどうなるのだ?

 

 

あ・・・
いや、いい。
もういいんだ。
どうせ私はもう一度検査を受ける気持ちなどさらさらないのだから。

 

 

「わかりました。生理食塩水負荷試験の判定結果は陰性ですね」