原発性アルドステロン症の機能確認検査の判定結果が出そろった。

 

 

カプトプリル負荷試験→陽性

フロセミド立位負荷試験→陽性

生理食塩水負荷試験→陰性

 

 

「で、先生。総合的な判断としては・・・」

「3つの機能確認検査の結果、二つ以上に陽性の判定が出たら原発性アルドステロン症陽性という判断になります」

「・・・・・」

「ただ、数字としては微妙なんですよね。カプトプリル負荷試験の結果もフロセミド立位負荷試験の結果も陽性なんですが、基準値からそれ程かけ離れているわけではない。また生理食塩水負荷試験の結果は一応陰性なんですが、数字としてはギリギリ陰性なんですよ」

「・・・・・」

「それから、そもそもアルドステロン濃度も高くないのです。それぞれの検査開始前のアルドステロン濃度の値を見てください・・・」

 

 

カプトプリル負荷試験

0 60 90min
PRA(ng/ml/hr)

 

0.3 0.3 0.3
PAC(pg/ml)

 

113 98.7 115
ARR 376.6 329 383.3

 

 

ラシックス立位負荷試験

0 60 120min
PRA(ng/ml/hr)

 

0.3 0.6 0.6
PAC(pg/ml)

 

107 147 177
ARR 356.6 245 295

 

 

生理食塩水負荷試験

0 240min
PAC(pg/ml)

 

150 54.3

 

 

 

「113、107、150。原発性アルドステロン症であるとしても、それ程高い数値ではないのです。」

「それで?」

「私としては積極的には手術はお勧めしません」

「・・・・・」

「手術にはリスクもありますし、上手くいったとしても高血圧が完治する可能性も高くはありません。ただ、原発性アルドステロン症ではあるので、アルドステロン濃度を下げる薬は飲んでも良いかもしれません。どうされますか?」

 

「・・・この場では決められません」

「もちろんいいですよ。ゆっくり考えてもらって構いません」

「で、薬物療法の場合、どんな薬を飲むことになるのですか?」

 

すると、W医師は検査結果が記載されているコピー用紙の切れ端を裏返して、ペンを走らせた。

 

 

アルダクトンA

セララ

 

 

「アルドステロン濃度を下げる薬としてはこの2種類があります」

「・・・」

「一般的にはアルダクトンAを使うので、これが良いかと・・・。ただ、ごくまれにですが副作用を生じることもあります」

「乳が張ってくるんですよね」

「そっそっそっそっそっ・・・」

W医師はものすごく塩が効いた梅干を口に入れた時のように口をとがらせながらうなずいた。

 

原発性アルドステロン症の薬物治療(アルダクトンA・セララ)と副作用

 

 

「この場では決められない」と入ったが、本当のところ私の心は決まっていた。
手術はしない。
こんな病院で私の体にメスを入れさせるわけにはいかない。

 

で、乳が張ってくる副作用か・・・

まぁないだろう。