「最後にMRI検査の結果なんですが・・・」

「はい」

「下垂体には異常はみつかりませんでした。つまり尿崩症ではありません」

「そうですか。では、多尿の原因はやはり原発性アルドステロン症ということでしょうか?」

「ん~、そうとは言い切れません。のび助さんの入院中の飲水量の記録を見ると、4日間ともに一般人の平均である2リットルを下回っています。そして、排尿の回数も機能確認検査の副作用で多くなっていますが、検査の影響がなければ一般人とさほど変わらないと思われます。ですから必ずしも原発性アルドステロン症が原因とは・・・」

「心因性であると?」

「まぁ、その可能性もあります。はっきりしたことは言えませんが・・・」

「そうですか」

 

 

「はっきりしたことは言えませんが・・・」との言葉通り、どうにもこのW医師の発言ははっきりとしていない。
歯切れが悪い。

もともとこういう医師なのか?
あるいは私が「もっとわかりやすい原発性アルドステロン症診療マニュアル」を見ながら考えながら話しているので、発言が慎重にならざるを得ないのか?

 

医師といえども必ずしも全ての病気に精通しているわけではないだろう。
患者としてはテキトーにあしらわれない様にできる限り知識をもって診察に臨むべきなのだ。
そうでないと、テキトーに実施された検査がテキトーなものだったことにすら気が付けないことになるのだから。

 

「ところで先生。MRI検査の結果、白質病変はありませんでしたか?」

「え・・・いや、それはわかりません。今回の検査はあくまでも尿崩症についての検査だったので・・・」

「え・・・、いや、画像を見ればわかるんじゃないんですか?白質病変があったら画像に映るでしょ?」

「いや・・・検査対象が違うので・・・。それはわかりません」

 

ホントか?
普通に映るんじゃないのか?

ホントはW医師は画像なんて見てないんじゃないか?
他の医師に判断してもらって結果だけ聞いたんじゃないのか?

 

「では、次回、高血圧内科のT先生の診察を受けてください。その時までに手術をするかどうか決めてもらってよろしいでしょうか・・・」

「・・・はい、わかりました」

 

次回の診察の予約を入れて私は病院を後にした。

 

私はまたしても失敗した。
退院前にW医師に明確に意思表示しておくべきだったのだ。
MRI検査結果の説明を受ける際に白質病変の有無も教えてくれ、と。