2016年4月12日
いよいよ原発性アルドステロン症検査入院の日がやってきた。
10時半までに入院手続きを済ませるように言われている。
入院中最低限必要なものだけをボストンバックに詰めて、私はタクシーで病院に乗りつけた。
到着時間は午前10時。
悪くない。
病院に着くとまずは入院受付の手続き。
いくつかの書類に所定事項を記入した。
続いて身長、体重、血圧、熱を測定。
身長が1cmほど縮んでいた。
想定外の事実に直面し、私は少なからずショックを受けていた。
そのショックから立ち直る間もなく、私は女性職員に導かれるままに今日から入院する部屋に案内された。
四人部屋の窓際。
9階なので結構見晴らしがいい。
日当たりもよさそうだ。
部屋の中に他の入院患者はとりあえず見当たらない。
ただ、私物が置かれてあるベットが一つある。
検査か何かで出ているのだろう。
他の人が入ってきても私はさほど気にならないので、これなら快適に入院生活を送れそうだ。
「今日から飲水制限をしてもらいます。1日の飲水量は3リットル以内です」
コップと記録用紙を差し出しながらナースが私にそう言った。
そうだ。
入院中は飲水制限があるのだ。
点滴などを打たれる検査はたぶん平気だろうが、口渇がひどい私にとって飲水制限は辛い。
果たして耐えられるだろうか・・・。
「飲水されるときは必ずこの飲水用のコップに水を入れて量を測って飲んでください。飲むたびにその量を用紙に記録します。」
「はぁ・・・」
「そして排尿についてですが・・・」
ナースに連れられて私は部屋の外のトイレに向かった。
そしてトイレの中に入ると、便器の横のスペースになにやら古ぼけた食器棚のようなものがあった。
そして、その食器棚の横には小さな洗濯機のような四角い箱が置かれている。
「ここにのび助さんの名前がかかれてある尿瓶があります。排尿は必ずこの尿瓶にしてください。そして出した尿は必ずこの計測器に入れてください。器械が尿量を記録しますから、のび助さんは何も記録する必要はありません」
「はぁ・・・」
食器棚らしきものの中には入院患者の名前が書いてある尿瓶が大量に敷き詰められていた。
なるほど。確かに私の名前が書かれている尿瓶もある。
「尿を入れるときにはこのボタンを押します」
洗濯機らしき箱のボタンを押すと、患者の名前がずらりと出てきた。
その中に私の名前もある。
「ご自分の名前を押されてから尿を入れてください」
なるほど。
中に入れるのは洗濯物ではなく尿なのね。
それにしても、これを4日間続けるのか・・・
なんだかどんよりした気分になってきた。
再び入院部屋。
ナースからテレビや金庫などの使い方の説明を受けた。
そしてお風呂。
お風呂は原則として二日に一度だけ。
ただしシャワーは毎日入っていいらしい。
助かった。
髪は決して多くはない私ではあるが、髪を洗えない日があるなんてことは私には耐えられない。
シャワーだけでも毎日入れるのであれば、とりあえずはOKだ。
「今日の検査は胸部のレントゲン撮影と心電図です。検査は午後からなのでそれまでは自由にしてもらって結構です」
全ての説明が終わると、ナースは部屋を出て行った。
一人になった。
とりあえず金庫の使い方を確かめた。
そして、その中に財布と腕時計を入れて鍵をかけた。
さてと・・・
することがなくなった私は1階にある図書室に向かった。
病院の9階からエレベーターで1階に降りるのは結構時間がかかる。
でもどうせ何もすることもないので特段いらいらすることもなかった。
図書室に入ると、スタッフに「こんにちは」と声をかけられた。
私はスタッフに軽く会釈して、それから本棚を物色し始めた。
本の数は決して多くはない。
でもその中から面白そうな小説を選んで借りて入院部屋に持っていった。
お昼ごはんまで小説を読みながら時間をつぶすか・・・
部屋に入り、ベットの周りのカーテンを閉めた。
そしてベットの上にあぐらをかいて小説を読み始めた。
読み始めると、私は自然と小説の世界に入り込んだ。
時間がたつのも忘れ、自分が病院にいることすら忘れているような感覚でいたかもしれない。
突然、ベットの前のカーテンが開いた。
顔を上げた私の目の前にどうみても20代前半にしか見えないピチピチした若い女性がそこに立っていた。